気ままな日々

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「さくら」 茨木のり子さんの詩 

「さくら」                             茨木のり子      1992年作

ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
据えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を
ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と





                 
「さくら」 茨木のり子さんの詩 _b0211899_955319.jpg                                                                                                   

                                                                                         紅しだれ桜之圖


                                 震災から一ヶ月の日に祈りをこめて。
by 1212jeff | 2011-04-11 09:17 | つれづれ(free)